キャッシュフロー計算書の基本的な読み方
キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書は企業の安全性や収益性、将来性を読み解くことができる財務諸表です。
主に、企業の資金の流れを読む際に使われる資料となります。もっと厳密に表現すると、キャッシュフローは現金の流れを表します。
これだけ聞くと、損益計算書と変わらないんじゃ?と思われる方もいるかもしれませんが、利益と「手元の現金」は同じではないのです。
例えば、売上をあげても顧客からお金を回収するまでにはタイムラグが生じます。また、仕入れなどを行えば売り上げよりも先に支払いが先に来ます。
つまり、利益が出たとしても、その資金の回収が後になり、最悪の場合は手元の現金がなくなって黒字倒産してしまう場合などもあるのです。
キャッシュフロー計算書はリアルな現金の流れがみえるため、黒字倒産を事前に予測することができます。
※キャッシュフロー計算書の作成は第二四半期と決算期のみでよく、第一四半期と第三四半期は作成省略可能です。
キャッシュフロー計算書の基本的な読み方
キャッシュフロー計算書は「営業キャッシュフロー」、「投資キャッシュフロー」、「財務キャッシュフロー」の大きく3つに分かれています。
営業キャッシュフロー
営業キャッシュフローは企業の通常業務の資金増減がわかる項目です。つまり、本業によってどれだけの現金を増やしたか(減らしたか)がわかります。
基本的に営業キャッシュフローがマイナスだと良くありません。この項目がマイナス続きだと、黒字倒産があり得ます。
ただし、業種によってはこの項目がマイナスの場合もあります。例えば不動産業です。
不動産業は土地や建物を仕入れて売りますが、土地や建物は非常に大きい棚卸資産となります。棚卸資産を仕入れた場合は現金が減るため、営業キャッシュフローのマイナス要素となりますが、不動産業としては次の売上のための当たり前の出費です。
そのため、不動産業では営業キャッシュフローがマイナスというのはよく見られます。
※もちろん、営業キャッシュフローはプラスの方が良いです。
なお、売上高に対する営業キャッシュフローの比率をキャッシュフローマージンと言いますが、これが7%以上あると良い営業キャッシュフローだと言えます。(これも業種によるとのろはありますが、一般的にという意味で)
投資キャッシュフロー
投資キャッシュフローは将来の利益につながる設備投資に使った現金の量がわかる項目です。ここがマイナスなら、将来への投資に積極的に現金をつかっていることになり、成長を見込むことができます。
固定資産や株、債権などの取得、売却などが投資キャッシュフローに含まれます。
なお、設備投資にあたる「有形固定資産の取得による支出」が減価償却費よりも多いかどうかはチェックしておきましょう。減価償却費よりも多く設備投資していないと、事業の維持が難しいからです。(もちろんこれも、設備投資をするかどうか業種により異なる側面があるため、一概にそうとは言えません)
財務キャッシュフロー
財務キャッシュフローは借りたお金や返したお金の量がわかる項目です。ここがマイナスなら、借りたお金を返済してクリーンな経営ができているということになります。
借入を増やせば自己資本比率が下がり、増資は一株当たりの利益や純資産が下がるため、財務キャッシュフローはマイナスの方が良いことがわかります。
逆に、自社株の買い入れや配当などの株主還元は、財務キャッシュフローがマイナスになるため、企業にも株主にも良い動きとなります。
一番理想的なのは、営業キャッシュフローがプラス、投資キャッシュフローと財務キャッシュフローがマイナスの状態です。
さらにいえば、営業キャッシュフローのプラス分で投資キャッシュフローと財務キャッシュフローを賄えている状態が最高でしょう。
株主資本利益率とは
株主資本利益率
株主資本利益率は利益と株主資本との関係を表す指標です。
株主資本利益率 = 純利益 ÷ 純資産
なぜ純利益を使うかというと、純資産は株主から集めたお金であり、株主に還元されるお金は純利益から賄われます。
つまり、株主から集めた純資産を使い、どれだけの純利益(還元するお金)を儲けることができたか、その効率度合いを測る指標なのです。
海外の投資家は、このROEを非常に重要視する傾向にあります。
なお、豆知識ですが、純利益ベースのROAに自己資本利益率の逆数をかければ、ROEが算出できます。
つまり、ROAを上げるか、自己資本比率を下げればROEを上げることができますが、自己資本比率を下げず、ROAを上げることでROEも上昇させるのが正しい経営と言えるでしょう。(自己資本比率を下げるような方法は会社の倒産リスクを高めるだけで、そのようなROEに価値はありません。)
資産回転率とは
資産回転率
資産と売上高の関係を表す指標が資産回転率です。
資産回転率 = 売上高 ÷ 資産
計算式を見て分かる通り、売上高を上げるために資産をどれだけ使ったかという「資産の有効活用度合い」を表す指標です。
例えば、製造業では1倍程度が標準と言われます。
資産回転率の注意点
なお、資産回転率が高い場合でも、注意が必要な時があります。それは、IT業界のような資産を使わずに費用(人件費)をたくさん使って売上を上げるような業種の場合です。
IT業界は人件費をかけてソフトウェアを作り売上を上げますが、資産よりも圧倒的に売上原価が大きいです。そのため資産回転率は高く見えがちですが、それは当たり前で、このような業種は売上原価が大きくなって下手をすれば倒産ということも普通にあり得ます。
資産は経営が苦しいときの保険になり得るのです。そのため、資産回転率が高い企業は自己資本比率などが高くても、売上原価のコントロールが下手な人が経営していればたちまち危機に陥るため、売上原価の動向を注意してみるようにしましょう。
自己資本比率とは
自己資本比率
自己資本比率は、資産を買うために使う資金の中で、純資産の割合がどの程度かを表す指標です。
自己資本比率 = 純資産 ÷ 資産
一般的には15%以上あれば安全と言われますが、例えば製造業は設備などの固定資産を多く持つため20%以上必要と言われ、卸売業は売掛金や棚卸資産などの流動資産を多く持つため15%以上必要と言われます。
自己資本比率の注意点
自己資本比率は高すぎてもだめです。
いまは超低金利の時代で、短期借入金などの負債はそれほど重くありません。
しかし純資産は株主に配当を出すことも検討しなければならず、一般的には国債の金利にプラスアルファが求められます。
その場合、借入金の方がコストが抑えられるのです。
自己資本比率が高すぎるということは純資産が多いということです。金利の流れに合わせて、借入金で賄う方がいまは効率的なのです。
また、株式を発行しすぎて純資産が多い場合などは、一株の利益が希薄化し、業績の上げ幅ほど株価に反映されないという事情も発生します。
流動比率とは
流動比率
流動比率は短期的な支払能力を表します。
流動資産は1年以内に現金化、流動負債は1年以内に支払いを行う換金性の高いものです。
1年以内に返さなければならない負債は1年以内に現金化できる流動資産で返済すべきという考えのもと、短期的な支払能力の指標として流動比率が使われます。
一般的には120%を超えていれば安全と言われています。ただし、安全な率は業種によって異なるため、120%を超えているからといって一概に安全とは言いきれません。
なお、流動負債や流動資産にどのようなものがあるか例を挙げておきます。
流動負債
買掛金 : 購入したが支払をしていないお金
短期借入金 : 1年以内に返さなければならないお金
支払手形 : 現金の代わりに手形を出して支払うお金
特に注意すべきは短期借入金や支払手形です。これらは銀行が相手であるため、二度支払が滞れば銀行取引を停止されてしまい、事業が存続できなくなります。
流動資産
現金預金 : その名の通り、現金や預金のこと
有価証券 : 株式とか(短期売買目的に限る)
売掛金 : 売上が発生したが代金を受け取っていないお金
受取手形 : 代金の代わりに渡す手形
手元流動性とは
手元流動性
手元にあり、何にでもすぐに使える流動的な資金がどのくらいあるかを表す指標を「手元流動性」といいます。
何にでもすぐに使える流動的な資金というのは、非常に換金性の高いもののことです。
景気が悪化した時、すぐに使える資金があれば事業を継続できますが、手元流動性が低い場合は下手をすると倒産してしまいます。
手元流動性は下記の計算式で表されます。
手元流動性 = (現預金 + 換金性の高い資産 + すぐに借りられる資金) ÷ 月商
※月商は年の売上高を12で割ったものです
手元流動性は一般的に1以上が望ましいとされます。
なぜなら1を下回るようであれば、月々の売上で月々の支払をまかなうことになり、売上代金が回収できない事態に陥れば支払が滞ってしまいます。
また、大企業などは企業規模が大きく、社債発行や銀行からの資金調達がしやすいため、1あれば十分と言われます。
一方で、中小企業などは大企業のような手段があまりないため、1.5以上はあった方が良いでしょう。
なお、すぐに借りられる資金については貸借対照表からだけではわからないため、必要に応じてその企業のIR担当に問い合わせるなどしましょう。
貸借対照表の基本的な読み方
貸借対照表とは
貸借対照表は企業の資産と負債の量を把握するための財務諸表です。
企業の安全性を分析するときに最も重要な資料となります。
貸借対照表の読み方
貸借対照表は左右に分かれており、下記のような分かれ方をしています。
左側 : 「資産の部」
右側 : 「負債の部」、「純資産の部」
資産の部
貸借対照表の左側にあるのが、「資産の部」です。会社の財産は資産と呼ばれます。
資産は「土地」や「建物および構築物」、「現金および預金」などといった勘定科目に分類され、取得したときの金額で資産の部に記載されます。
そしてこれらの勘定科目は流動資産と固定資産のどちらかに分けられます。
流動資産
すぐに現金化できるものやすぐに使う予定の資産
固定資産
長期にわたって保有したり、使用する予定の資産
(例) 設備、土地、機械、投資有価証券など
負債と純資産の部
貸借対照表の右側にあるのが、「負債と純資産の部」です。
資産を買うためには資金が必要ですが、その資金の出所が負債と純資産なのです。
つまり、負債と純資産で資産を用意するため、左右の合計は必ず一致し、貸借対照表はバランスシートとも呼ばれます。
なお、負債と純資産の違いは、返済の義務があるかどうかということです。負債は借金して得たお金のため返す必要がありますが、純資産は株主から預かったお金であり、返す必要はありません。
そのため、純資産よりも負債が非常に多い企業は負債が返済できなくなるリスクがあり、業種により程度は異なりますが、負債の量でその企業の安全性を確認することができるのです。
為替の影響とは
為替の影響
為替の上げ下げは海外事業を営む企業に影響を与えます。
例えば、海外資産を持つ企業は決算時の為替レートで円に換算しますが、円高の場合は安い海外のお金を高い日本のお金に換えないといけないため、資産価値が目減りしてしまいます。
貸借対照表
貸借対照表では海外の「資産や負債」を取得したときの価値と、決算時の円建て換算したときの価値の差を「為替換算調整勘定」としてまとめて記載します。
貸借対照表では資産や負債を扱う点に注意しましょう。
損益計算書
外貨建ての取引の売上金額や仕入金額は、売上や仕入を計上したときの為替レートと、実際に決済された時点の為替レートでは差が生じます。
損益計算書ではその差額を「為替差損益」としてまとめて記載します。
海外に資産や店舗を持つ企業や、輸入品、輸出品を扱うような企業の場合は、マクロ的視点で為替レートを注意して見るようにしましょう。
財務諸表を読むポイントとは
財務諸表のポイント
四半期の数字を分析
財務諸表はあながち、本決算のみをみがちですが、それではその企業の細かい業績や資産の動きはしっかり読み取ることができません。
財務諸表を読む場合は必ず、四半期の数字をチェックしましょう。
上場企業であれば四半期決算を必ず公開しないといけないため、確認したい企業のIRのページを見ればすぐ出てくるでしょう。
四半期ごとに分析することでその企業の四半期別の特徴が見えてきたり、その四半期にどんなことが起きてその業績につながったのか、わかるようになります。
そこまで理解することで、次の四半期をある程度予測していくことが可能になるのです。
セグメント情報を分析する
セグメントとは事業単位のことです。企業はいくつかの事業を営むことが多数です。
企業全体の業績を見ることは重要ですが、セグメント単位の業績を調べることでさらに詳しく分析することができます。
その企業がどの事業に力を入れて、どれくらいの割合で企業の業績に貢献しているのかを知っておくことで、細かいレベルで先行きの予想が立てられるようになります。
また、企業がどのような業種を組み合わせているか、事業ポートフォリオを知ることもできます。複数の事業を営んでおけば、不況時でも収益を出す業種が業績を下支えする形となり、企業の安定感が増します。そのような不況時に稼ぐ力の度合いというのも測ることができます。
さらに、広範囲な地域にサービスを展開している場合は、地域別のセグメント情報も分析するようにしましょう。
どの分野な地域を伸ばそうとしているかがわかり、その企業の将来性までぶんせきできます。
売上原価と製造原価の違い
売上原価と製造原価の違い
一見同じもののように思いますが、売上原価と製造原価は違います。
実は、製造したものがすべてそのときの売上原価になるわけではないのです。製造したものの中で、売上が発生したものだけが売上原価となるのです。
製造原価の財務諸表上の位置づけ
製造したり仕入れたりしたものはすべて、貸借対照表の「たな卸資産」になります。
製品は大量生産した方が一個当たりの原価は小さくなるため、棚卸資産を抱えてでもたくさん作っておけばコストダウンが図れます。
そのようなことを考え、無計画に大量生産する企業には注意すべきです。いくら作っても売らなければその期の損益計算書の数字には現れないため、無理やりコストダウンする一種の荒技ができてしまいます。
そのため、貸借対照表のたな卸資産が売上高以上に伸びているときは、売れない在庫を抱えてしまっている場合があります。売上高の増減を見た後はたな卸資産の増減もチェックするようにしましょう。
たな卸資産が増えればキャッシュフローが悪化(現金を減らして在庫を増やす)するため、キャッシュフローが悪化している場合もたな卸資産を
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マクロ経済の動向
マクロ経済とは
マクロ経済とは、経済社会全体の動きのことを指します。
ざっくりいうと、物価や消費、金融などの動きを国全体の視点で考えることです。
円高や失業率などのニュースを見たことがあるかと思いますが、こういったものがマクロ経済の指標のひとつであり、これらの指標から大きな視点で世の中の動きを確認することができます。
ミクロ経済とは
マクロ経済とは反対の概念としてミクロ経済があります。ミクロ経済は個人や個々の企業の動向に着目します。
マクロ経済の指標となる物価が変わることで、個人や企業にどのような影響が出るかを考えるための概念です。
マクロ経済を企業分析に活かす
企業の業績を分析、予測するために、輸入物価や消費物価といったマクロ経済の指標の動きは重要になります。
マクロ経済の指標は企業の原価に直接影響するため、今後のマクロ経済の指標が予測できれば、個々の企業の費用の変化についても予測が立てられます。
例えば、世界的に見て新興国の成長は長期的に続くと予想されますが、日本は成長が乏しく需要増加が少ないケースが多いです。その場合、原材料費は新興国の需要でどんどん上がりますが、日本の需要が少ない産業では売上が伸びないため、原価だけが増えて利益を圧迫していくと予想できます。
このように、マクロ経済の動きは常にチェックしておく必要があるのです。